近年、契約や承認のやり取りが紙からデジタルへと移行し、「電子署名」や「電子サイン」という言葉を目にする機会が増えました。
しかし、似たような用語が多くて、「何がどう違うの?」と感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、混同されやすい 電子署名・電子サイン・電子印鑑・タイムスタンプ の違いを、法律上の位置づけや使いどころまで含めてざっくり整理します。
1. ざっくり覚える方法
- 電子署名 → 「誰が作ったか」+「改ざんなし」
- 電子サイン → 「同意しました」の意思表示
- 電子印鑑 → 見た目の押印。単体だと飾り
- タイムスタンプ → 「いつ存在したか」を保証
2. 4つの違いを一覧で比較
項目 | 主な意味 | 技術的仕組み | 主な利用場面 | 法的効力 | 特徴・注意点 |
---|---|---|---|---|---|
電子署名 | 本人が作成したことを電子的に証明する技術 | 公開鍵暗号方式(PKI)を利用。秘密鍵で署名、公開鍵で検証 | 電子契約、電子申請、重要文書 | 電子署名法により本人性・非改ざん性が推定される | 事前に電子証明書が必要(マイナンバーカード等) |
電子サイン | 手書きサインやクリック操作などで承認意思を示す | タッチパネル署名、クリック承認、メール認証など | クラウド契約(クラウドサイン、DocuSign) | 電子署名法の推定効力は基本なし | 証拠力は運用方法(ログ・IP記録等)で補強 |
電子印鑑 | 印影を電子データ化したもの | 画像データや電子署名付PDF | 見積書、請求書、社内文書 | 画像だけでは法的効力なし | 電子署名と組み合わせれば有効 |
タイムスタンプ | 文書が特定時刻に存在していたことを証明 | ハッシュ値+時刻を第三者機関が署名 | 契約書、知的財産の存在証明 | 本人性は証明しない | 有効期限や更新が必要な場合あり |
3. 各用語の詳しい解説
① 電子署名
- 何ができる?
「誰が作ったか」と「改ざんされていないこと」を証明します。 - 仕組み
公開鍵暗号方式(PKI)を利用し、秘密鍵で署名、公開鍵で検証します。 - 法的効力
電子署名法で、本人が作成したと推定されます。 - 例
マイナンバーカードを使った行政手続き、商業登記電子証明付き契約書。
② 電子サイン
- 何ができる?
「この内容に同意しました」という意思を簡単に示すことができます。 - 仕組み
手書きサイン入力、クリック承認、メール認証など。 - 法的効力
単体では電子署名法の推定効力はありませんが、ログやアクセス履歴を残せば証拠力が上がります。 - 例
クラウドサインやDocuSignでの契約。
③ 電子印鑑
- 何ができる?
見た目は印鑑と同じで、社内外の文書に押印できます。 - 仕組み
単なる印影画像、または電子署名付きPDFに埋め込み。 - 法的効力
画像だけでは効力なし。電子署名とセットにすれば有効。 - 例
見積書・請求書・社内稟議の承認。
④ タイムスタンプ
- 何ができる?
「この文書が特定の日時に存在していた」ことを証明します。 - 仕組み
文書のハッシュ値と時刻情報を第三者機関が電子署名。 - 法的効力
改ざん防止と時刻証明はできるが、作成者本人の証明は不可。 - 例
契約書の作成日時証明、特許出願前の資料保全。
まとめ
電子契約やオンライン業務を安全に進めるには、「本人性」「改ざん防止」「時刻証明」の3つをどこまで担保したいかで選ぶべき手段が変わります。
- 法的に強い証明が必要なら 電子署名+タイムスタンプ
- 社内承認や簡易契約なら 電子サインや電子印鑑 でもOK(証跡の残し方に注意)
正しい理解と適切な組み合わせで、デジタルでも安心できる契約環境を整えましょう。
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